弁護士に頼むとしても、裁判で勝つには、弁護士に丸投げしないで、離婚のことをよく知って準備した方が良いです。
1.裁判離婚とは?
【離婚の種類】
●協議離婚(きょうぎ・りこん)
…夫婦で話し合って「離婚をします。」と決めて、離婚届を出す離婚の方法。
●調停離婚(ちょうてい・りこん)
…家庭裁判所で、調停委員という男女2人の人に間に入ってもらって、夫婦で話し合いを行う離婚の方法。夫婦で「離婚します。」と決めないと調停離婚はできない。
●裁判離婚(さいばん・りこん)
…夫婦の話合いがまとまらないので、協議離婚も調停離婚もできない場合におこなう裁判で離婚。裁判官が、離婚するかしないか決定する。
2.離婚裁判で決められること
〇離婚するのか、しないのか
〇子どもについて
・親権者(未成年の子がいる場合)
・面会交流
・養育費
〇金銭の請求について
・慰謝料
・財産分与
・年金分割
3.どの場合に裁判で離婚するの?
離婚するかしないかで意見が対立する場合
協議離婚の場合も、調停離婚の場合も、夫婦が両方とも「離婚します」と合意した場合でなければ離婚できません。
そのため、夫婦のどちらかが離婚したくないと言って、ゆずらない場合には、離婚するには裁判をすることになります。
離婚の裁判をする場合は、夫婦の一方が「離婚したくない」と言い続けても、裁判所が「離婚を認める」という判断すれば、離婚できます。
夫婦で離婚すると決めても、離婚の条件がもめる場合
夫婦で離婚すると決めた場合であっても、離婚の条件(親権者・養育費・慰謝料・財産分与など)でもめている場合は、協議離婚や調停離婚をせずに、裁判をした方が良いです。
4.離婚裁判をする前には必ず調停が必要です
夫婦での離婚の話し合いがまとまる可能性がない場合でも、いきなり離婚裁判をすることはできません。
まず先に離婚調停をして、調停がまとまらずに不成立になった場合でなければ、離婚裁判をすることはできないと法律で決まっているのです。
夫婦の話合いで離婚できないことが明らかな場合も、まずは、離婚調停を行い、調停を不成立にしてからでないと、離婚裁判をすることはできないのです。
5.離婚裁判と弁護士
5-1.離婚裁判を行うのに弁護士は必要か?
弁護士に依頼しなくても、離婚裁判をすることはできます。
しかし、裁判をするには法律の知識が必要ですから、弁護士に依頼したほうが良いです。
5-2.弁護士費用はいくらかかるの?
調停から同じ弁護士に依頼した場合
=調停の弁護士費用40万円~60万円+裁判の弁護士費用40~70万円
裁判から弁護士に依頼した場合
=50~100万円
調停は弁護士をつけなかった、あるいは調停では他の弁護士に頼んでいた場合に、裁判からその弁護士に依頼するときの料金です。
くわしくは→こちら
6.裁判で離婚が認められるには?
離婚の裁判をする場合は、夫婦の一方が「離婚したくない」と言い続けても、裁判所が「離婚を認める」という判断すれば、離婚できます。
なので、本当に自分のケースは離婚できそうかについてきちんと知りたい人は、弁護士にきいてみてください。
ここでは、どんなケースでりこんができるのか、【めやす】を教えますね。
6-1.不貞行為(不倫)がある場合
相手に不貞行為(不倫)がある場合は、裁判での離婚が認められます。
「不貞行為」というのは、夫婦以外の異性と自分の意思で肉体関係をもつこと、つまり不倫がある場合です。
風俗店での性行為や、不特定な相手との売春なども「不貞行為」です。
ただし、プラトニックな恋愛関係の場合は「不貞行為」にあたりません。
6-2.DV(暴力)が行われる場合
相手から暴力をふるわれている場合も、裁判で離婚が認められます。
6-3.そのほかの離婚が認められるケース
・性的な不一致(異常なsexを強要されるなど)
・アルコール依存症・薬物依存
・限度をこえた宗教行為(多額のお金をつぎ込むなど)
・借金・ギャンブル・浪費(生活費が支払えなくなるような場合)
・暴力・虐待・モラハラ
・犯罪を行う(何度も犯罪をくり返す場合や、長い間刑務所に入る場合など)
6-4.長い間別居をすれば離婚が認められる
長期間の別居があれば、夫婦の関係は壊れているといえるので、裁判でも離婚が認められます。
夫婦の両方に離婚の原因がない場合
だいたい5~10年くらい別居をしていると離婚が認められます。
相手に離婚の原因がある場合
あなたが「離婚したい」と言って裁判をする場合に、相手に不倫やDV、ギャンブル、浪費など、離婚原因があるときは、別居していなかったり、別居期間が短かったりしても離婚が認められます。
自分に離婚の原因がある場合
自分が不倫をしたというように、自分に離婚原因があるような場合は、不倫した側が「離婚したい。」と裁判をしてもふつうは離婚は認められません。
しかし、自分の不倫の後に、長い間、別居をしていた場合は、本当に夫婦関係はこわれているといえるので、不倫した側が裁判をしても離婚が認められる場合もあります。
この場合は、10~20年くらい別居している必要があります。
7.離婚裁判の期間
裁判離婚の期間は約1年~2年程度です。
最初の裁判の結論に納得できない場合は、控訴(さらに上の裁判所で争うこと)することができます。
控訴の裁判の結論にも納得できない場合は、上告(控訴の判決に不服がある場合に最高裁で争うこと)することができます。
最初の裁判→控訴→上告と裁判をする場合は、最低でも3年程度はかかります。
8.裁判離婚の流れ
離婚裁判の流れ
①離婚調停を行い、調停が不成立になる
↓
②家庭裁判所に、離婚裁判を申し立てる
↓
③家庭裁判所からの呼び出しを受ける
↓
④裁判の準備をする
↓
⑤口頭弁論(裁判所で夫婦がそれぞれ主張を述べる)
↓
⑥判決
↓
⑦離婚成立
↓
⑧離婚届提出
①離婚調停の不成立
離婚裁判をする前には、かならずいったん離婚調停をしなければならないとされています。まず、離婚調停を行って、調停が不成立になった後で、はじめて離婚裁判をすることができます。
②家庭裁判所に、離婚裁判を申し立てる
「訴状」を作成し、家庭裁判所へ提出して訴訟を提起します。
「訴状」というのは、何を請求するのか(離婚したい、親権者、慰謝料、財産分与、養育費など)、どのような離婚の原因があるかなどについて、離婚を請求する側(原告といいます)が書いた書面です。
③家庭裁判所からの呼び出し
裁判所で裁判の期日(日にち)が決められます。
原告(訴えた側)に呼び出し状(何月何日に裁判所に来てくださいという通知)が届きます。
被告(訴えられた側)には、呼び出し状と訴状の写しが届きます。
④裁判の準備
被告(訴えられた側)は訴状を見て、答弁書(訴状に反論する書類)を作成し、裁判所に提出します。
答弁書は自分で被告に送付しますが、裁判所から被告に送付してもらうこともできます。
⑤口頭弁論
「口頭弁論」というのは、裁判所で、裁判官の前で当事者(夫と妻)や弁護士がそれぞれの主張を述べる手続きを言います。
口頭弁論は、月1回くらいのペースで行われ、双方の主張をじゅうぶんに出し合います。
裁判所は、原告・被告が作成した書面の内容を確認し、両方の意見が違う点について証拠を調べます。
書類を証拠として提出するだけでなく、原告や被告への質問をしたり、証人を呼んで証人に質問をしたりできます。
⑥判決(あるいは和解)
離婚するかしないか、離婚の条件を認めるか認めないかという判決が下されます。
判決内容が不満である者は、控訴(さらに上の裁判所で争うこと)することができます。
裁判が進んでくると、裁判官から、「判決をせずに『和解』をしてはどうですか」とすすめられることが、多いです。
和解というのは、お互いにゆずりあって解決策を見つけ、判決をせずに裁判を終了することを言います。裁判官が和解案を出してくれることもあります。
たとえば、妻が「100万円の慰謝料を払え」と請求し、夫が「払わない」と拒んでいる場合に、「40万円の慰謝料を支払う」ということで和解するような場合です。
判決をするよりも、早く解決し、夫婦双方の負担も軽くなるので、判決で離婚するよりも、和解するケースの方が多いです。
⑦離婚成立
判決書が送られた日から2週間以内に、原告も被告も控訴(裁判の内容が不服な場合にさらに裁判をすること)をしなければ判決が確定し離婚が成立します。
⑧離婚届提出
判決確定後10日以内に、判決書謄本、判決確定証明書とともに離婚届を市町村役場へ提出します。離婚届を提出するのは、原則として原告です。この場合は、離婚届に相手の署名捺印と証人は不要です。
9.離婚裁判の費用
収入印紙代
離婚裁判の訴えには収入印紙の購入が必要になります。争う内容が離婚するかしないかだけであれば13000円です。
財産分与・養育費・慰謝料などの請求も行いたい場合は、追加で1200円ずつ必要です。
また、160万円を超える金額の慰謝料を請求する場合は、1200円ではなく慰謝料の請求額に応じた金額となります。
郵便切手代
提訴する裁判所によって金額が異なりますが、東京地方裁判所の場合は6400円が必要となります。他の裁判所でも、この同程度の金額がかかります。