1.加害者があなたに近寄らないようにしたい=保護命令
1-1.保護命令とは?
加害者が被害者に近づかないように、裁判所が命令をする制度です。
1-2.裁判所が出す保護命令の種類
被害者への接近禁止命令
被害者の身辺のつきまといや、住所や勤務先の付近でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令。
子どもへの接見禁止命令
被害者と同居する未成年の子どもへの身辺のつきまといや、住所や学校の付近でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令。
加害者が子どもを利用して、被害者が加害者と会わなければならい状態にすることをふせぎます。
親族への接見禁止命令
被害者の親族への身辺のつきまといや、住所や勤務先の付近でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令。
加害者が被害者の実家に押しかけて暴れるなど、親族を利用して被害者が加害者と会わなければならない状態にすることをふせぎます。
退去命令
被害者と加害者が同居している場合に、加害者がいない間に被害者が引っ越しをできるように、2か月間、被害者と同居している家からの退去を命じます。
電話等禁止命令
相手方からの面会要求、深夜の電話やメールなどの迷惑行為にあたる連絡を6か月間禁止すします。
1-3.保護命令の手順
①DVの証拠を集めて、配偶者暴力等支援センターや警察署に相談する
保護命令を裁判所に申し立てるには、申し立ての前に配偶者暴力等支援センターや警察署への事前相談が必要です。
②裁判所に保護命令を申し立てる
どのような保護命令を希望するか選びます。複数の種類の保護命令を申し立てることもできます。
③加害者の審尋(=面接)
加害者の審尋(=面接)を行い、加害者の意見を聞きます。被害者の出席は不要です。
④保護命令の発令
1-4.どのような暴力に対して保護命令は出されるの?
保護命令が出されるのは、身体的暴力に限ります。精神的暴力・性的暴力・経済的暴力のみの場合は、保護命令は出されません。
1-5.保護命令の効果
保護命令は、加害者が被害者・子ども・親族への接近することを禁止したり(接近禁止命令)、被害者と同居している家からの退去を命じたり(退去命令)、加害者からの面会要求や電話やメールを禁止したりしますが(電話等禁止命令)、命令だけでは接見禁止等を強制することはできません。
しかし、加害者がこれらの保護命令に反して、接近等を行う場合は、1年以上の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。このように、保護命令に反する行為は犯罪になりますから、警察が逮捕できます。
たとえば、裁判所から被害者への接近禁止命令が出されていない場合は、加害者が被害者に接近してもそれは犯罪になりません。しかし、接近禁止命令が出ている間に、加害者が被害者に接近した場合は、接近だけで犯罪になりますので、警察に逮捕してもらうことができます。
1-6保護命令の申立に必要な書類
□申立書
□当事者間の関係を証明する資料(双方の戸籍謄本や住民票など)
□DV被害の証拠(けがの写真、診断書、陳述書など)
□収入印紙(1000円分)
□連絡用の郵便切手
2.被害者の居場所を加害者に知られないための制度:住民基本台帳事務における支援措置
あなたやお子さんが、加害者から逃げて別の場所に住民票を移した場合、加害者があなたの住民票を請求すると居場所が分かってしまいます。
「住民基本台帳事務における支援措置」を行うと、加害者があなたやお子さんの住民票を取得できなくなります。
配偶者暴力等支援センターまたは警察に「住民基本台帳事務における支援措置」をしたいと相談してください。
3.お金がなくて加害者から逃げられない場合
3-1.市区町村の役所からお金を借りられます
生活福祉資金貸付制度・母子福祉資金など様々な制度があります。市区町村によって貸し付けの内容が異なるので、お住いの市区町村役場や配偶者暴力相談支援センターに問い合わせてください。
〇生活福祉資金貸付制度
生活面で経済的に困窮する人を対象に、低い金利でお金を貸す制度
〇母子福祉資金
母子家庭に対して低い金利でお金を貸す制度
3-2.生活保護
生活保護を申請する場合は、お住いの市町村役場に相談してください。
3-3.お金がなくても弁護士に相談できる(民事法律扶助)
収入(夫婦の収入の合計ではなく、あなただけの収入です)や財産が少ない人は「民事法律扶助」という制度を利用できます。
この制度を利用すると、無料の法律相談を受けられ、また、安く弁護士に依頼でき弁護士費用も借りることができます。
4.加害者から逃げている間の健康保険
また、保険証を持たないで逃げてきた場合も、保険に入れるから大丈夫です。
加害者の扶養となっている場合、その扶養から外れて新たに国民健康保険に加入することができます。
その場合、収入がなかったり、収入が少ない場合は、国民健康保険料の免除や減額ができます。
詳しくは、手続きについては配偶者暴力相談支援センターや区市町村役場に相談してください。