逃げたときに生活できるシェルターもあるから、お金がなくても大丈夫です。それでは、くわしくみてみましょう。
1.これってDV?チェックリスト
まずは自分がDVを受けていないか、チェックしてみましょう。
今はやさしくても、DVに当てはまる場合は、気を付けてください。
これらに1つでもあてはまれば、DVです。
1-1.身体的暴力
これに当てはまらなくてもけがをさせるような行為は身体的暴力です。
□殴る・平手打ちをする
□ける
□物を投げる(あなたに物があたらなくてもDVです)
□首を絞める
□刃物などの凶器をからだにつきつける
□髪をひっぱる
□腕をねじる
□引きずりまわす
1-2.精神的暴力(モラハラも含みます)
相手の心を傷つける行為は精神的暴力です。
□何を言っても無視して口をきかない
□ののしる
□「あなたや子どもに危害を加える」と脅かす
□人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
□大声でどなる
□大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
□なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす
1-3.性的暴力
□性的行為の強要
□避妊に協力しない
□中絶を要求する
□ポルノを無理やり見せる
1-4.経済的暴力
□生活費を渡さない・頼み込まないと生活費を渡さない
□金銭的な自由を与えない
□外で働くことを禁じる
□仕事を無理やりやめさせようとする
1-5.社会的暴力
これに当たらなくても、相手と社会との交流を妨害する行為は社会的暴力です。
□人間関係や行動を監視する
□家族や友人との付き合いを制限する
□手紙や電話、メールなどを細かくチェックする
2.まず、DVの相談をしましょう
2-1.まず、相談だけしたいときは「DV相談ナビ」「DV相談プラス」
DV相談ナビ
「まずは誰かに相談したい」というときは「DV相談ナビ」に電話をしてみてください。
日本全国共通の電話番号ですが、あなたの電話の発信地から近い相談窓口に自動転送してくれます。
話をするだけでも心が軽くなるなどの効果が得られますので、悩みがあるならまずはDV相談ナビが適切です。
匿名(あなたの名前を言わない)での相談でも受け付けてくれます。
電話番号 #8008 (時間は各市区町村役場によります)
DV相談プラス
電話相談 0120-279-889 (24時間受付)
メール相談は→こちら (24時間受付)
チャット相談 12:00〜22:00
【配偶者暴力相談支援センターでやってくれること】
・カウンセリング
・暴力の被害者や子どもの緊急時における安全の確保・一時保護
・被害者が自立して生活することをができるよう援助
・被害者住める場所についての情報提供その他の援助
2-2.相手からの逃げ場所を提供「配偶者暴力相談支援センター」
日本全国277箇所に「配偶者暴力相談支援センター」があり、ほとんどの市区町村の役所に「配偶者暴力相談支援センター」があります。
「DV相談ナビ」や「DV相談プラス」であなたの近くの配偶者暴力支援センターを聞いてみてください。
●全国の配偶者暴力相談支援センターの一覧は→こちら
2-3.警察に助けを求めましょう
DVは犯罪に当たる場合があります。
●加害者が殴る、ける、物を投げるなどの身体的暴力を行った場合→傷害罪や暴行罪にあたります。
●あなたや子どもを傷つけるなどといって脅すような場合→脅迫罪にあたります。
●あなたを侮辱する場合→侮辱罪に当たります。
警察に助けを求めましょう
暴力を振るわれたときは、すぐに警察に助けを求めましょう。犯罪として捜査してくれます。
また、ひんぱんに暴力を振るわれる場合は、近辺のパトロールを依頼することもできます。
3.加害者があなたに近寄らないようにしたい=保護命令
保護命令とは?
加害者が被害者に近づかないように、裁判所が命令をする制度です。
裁判所が出す保護命令の種類
被害者への接近禁止命令
被害者の身辺のつきまといや、住所や勤務先の付近でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令。
子どもへの接見禁止命令
被害者と同居する未成年の子どもへの身辺のつきまといや、住所や学校の付近でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令。
加害者が子どもを利用して、被害者が加害者と会わなければならい状態にすることをふせぎます。
親族への接見禁止命令
被害者の親族への身辺のつきまといや、住所や勤務先の付近でのうろつきを6ヶ月間禁止する命令。
加害者が被害者の実家に押しかけて暴れるなど、親族を利用して被害者が加害者と会わなければならない状態にすることをふせぎます。
退去命令
被害者と加害者が同居している場合に、加害者がいない間に被害者が引っ越しをできるように、2か月間、被害者と同居している家からの退去を命じます。
電話等禁止命令
相手方からの面会要求、深夜の電話やメールなどの迷惑行為にあたる連絡を6か月間禁止すします。
保護命令の手順
①DVの証拠を集めて、配偶者暴力等支援センターや警察署に相談する
保護命令を裁判所に申し立てるには、申し立ての前に配偶者暴力等支援センターや警察署への事前相談が必要です。
②裁判所に保護命令を申し立てる
どのような保護命令を希望するか選びます。複数の種類の保護命令を申し立てることもできます。
③加害者の審尋(=面接)
加害者の審尋(=面接)を行い、加害者の意見を聞きます。被害者の出席は不要です。
④保護命令の発令
どのような暴力に対して保護命令は出されるの?
保護命令が出されるのは、身体的暴力に限ります。精神的暴力・性的暴力・経済的暴力のみの場合は、保護命令は出されません。
保護命令の効果
保護命令は、加害者が被害者・子ども・親族への接近することを禁止したり(接近禁止命令)、被害者と同居している家からの退去を命じたり(退去命令)、加害者からの面会要求や電話やメールを禁止したりしますが(電話等禁止命令)、命令だけでは接見禁止等を強制することはできません。
しかし、加害者がこれらの保護命令に反して、接近等を行う場合は、1年以上の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。このように、保護命令に反する行為は犯罪になりますから、警察が逮捕できます。
たとえば、裁判所から被害者への接近禁止命令が出されていない場合は、加害者が被害者に接近してもそれは犯罪になりません。しかし、接近禁止命令が出ている間に、加害者が被害者に接近した場合は、接近だけで犯罪になりますので、警察に逮捕してもらうことができます。
保護命令の申立に必要な書類
くま:保護命令を裁判所に申し立てる前に、配偶者暴力等支援センターか警察署に必ず相談しなければならないことになっています。詳しい手続きは、配偶者暴力等支援センターやもよりの警察署に聞いてね。
□申立書
□当事者間の関係を証明する資料(双方の戸籍謄本や住民票など)
□DV被害の証拠(けがの写真、診断書、陳述書など)
□収入印紙(1000円分)
□連絡用の郵便切手
4.被害者の居場所を加害者に知られないための制度:住民基本台帳事務における支援措置
あなたやお子さんが、加害者から逃げて別の場所に住民票を移した場合、加害者があなたの住民票を請求すると居場所が分かってしまいます。
「住民基本台帳事務における支援措置」を行うと、加害者があなたやお子さんの住民票を取得できなくなります。
配偶者暴力等支援センターまたは警察に「住民基本台帳事務における支援措置」をしたいと相談してください。
5.お金がなくて加害者から逃げられない場合
市区町村の役所からお金を借りられます
生活福祉資金貸付制度・母子福祉資金など様々な制度があります。市区町村によって貸し付けの内容が異なるので、お住いの市区町村役場や配偶者暴力相談支援センターに問い合わせてください。
〇生活福祉資金貸付制度
生活面で経済的に困窮する人を対象に、低い金利でお金を貸す制度
〇母子福祉資金
母子家庭に対して低い金利でお金を貸す制度
生活保護
生活保護を申請する場合は、お住いの市町村役場に相談してください。
お金がなくても弁護士に相談できる(民事法律扶助)
収入(夫婦の収入の合計ではなく、あなただけの収入です)や財産が少ない人は「民事法律扶助」という制度を利用できます。
この制度を利用すると、無料の法律相談を受けられ、また、安く弁護士に依頼でき弁護士費用も借りることができます。
6.加害者から逃げている間の健康保険
また、保険証を持たないで逃げてきた場合も、保険に入れるから大丈夫です。
加害者の扶養となっている場合、その扶養から外れて新たに国民健康保険に加入することができます。
その場合、収入がなかったり、収入が少ない場合は、国民健康保険料の免除や減額ができます。
詳しくは、手続きについては配偶者暴力相談支援センターや区市町村役場に相談してください。
7.DVの証拠を集めよう
7-1.なぜ、証拠集めが必要なの?
裁判所に対して、加害者に保護命令(被害者に近づくことを禁止するように命令or被害者の住んでいる家から出ていくように命令or電話をかけることなどを命令)を出すように申し立てをするときには、DVの証拠がなければなりません。
また、裁判離婚をする場合にも、DVがあったという証拠が必要です。
裁判離婚でなくても、離婚の話し合いをするときや、相談窓口にDVの相談をするときにも、本当にDVがあったことを明らかにするために、DVの証拠があると、よいでしょう。
7-2.何が証拠になるの?
裁判離婚をするための証拠については、身体的暴力だけではなく精神的暴力・性的暴力・経済的暴力・社会的暴力の証拠も含みます。
けがや傷の写真
けがや傷の写真を撮る場合は、誰の写真かわかるように、傷の写真だけでなく、誰の傷かわかるように顔と傷がいっしょに写っているいる写真も撮りましょう。
また、いつの写真かわかるようにその日の新聞やテレビなども写すようにするとよいです。
けがや傷で病院に行った際の診断書
診断書を作成してもらう際には、きちんとDVが原因であることを意思に伝えましょう。医師によっては診断書に「DVによる傷」と記載してもらえることもあります。
ただし、DVの現場を見ていない医師がその傷がDVによって生じたものであると判断することは難しいので、傷の原因を書いてもらえないことも多いです。
精神科・心療内科の診断書
精神的暴力の場合だけでなく、身体的暴力を行われた場合も、それが原因で精神的な病気になった場合は、DVの証拠となります。
この場合も、書いてもらえるなら「DVによって生じた精神的な病気」であるということを記載してもらいましょう。
加害者が壊した物の写真・動画
加害者が壊した家財道具、穴が開いた壁などがあれば、加害者が暴れたという証拠になるので、写真や動画で撮影しておきましょう。
DVをしている動画や音声
ビデオやボイスレコーダー、スマホの録音・録画機能を使って、相手の暴力・暴言を隠し撮りしておけば、有力な証拠になります。
ただ、隠し撮りが相手に見つかった場合、さらにDVが行われる可能性があるので、気を付けてださい。
加害者からのLINEやメール、電話の録音
相手の言動からDVがわかる場合は、LINEやメールのスクショ(送信取り消しなどが行われる場合があるので、念のためにスクショもしておきましょう)、相手からの電話の録音などをしておきましょう。
どのようなDVが行われたのか記載した日記やメモ
相手からどのようなDVが行われたのかをその都度、日記やメモに記載していた場合は、それも証拠となります。
PCやスマホでの日記は、後で簡単に書き変えられるので、証拠として弱いです。
できれば、その都度、手書きでメモしておきましょう。
配偶者暴力支援センターや警察に相談した時の証明書
保護命令を裁判所に申し立てるには、申し立ての前に配偶者暴力等支援センターや警察署への事前相談が必要です。
そのため、事前に相談した場合は、その証明書を保管しておいてください。
8.DVを原因とする離婚
8-1.裁判離婚の場合は、離婚原因があると認められることが必要
離婚には、大きく分けて3つの種類があります。
①協議離婚
夫婦で話し合って、離婚届を提出し成立する離婚
②調停離婚
家庭裁判所で、調停委員という人に夫婦の間に入ってもらって、夫婦で話し合って成立する離婚
③裁判離婚
夫婦の話し合いがまとまらない場合に裁判で成立する離婚
協議離婚や、調停離婚は夫婦で話し合って、お互いが離婚をすると決めれば離婚は成立します。ですから、離婚原因がなくても、お互いが納得すれば離婚できます。
しかし、夫婦の一方が離婚したくない場合に、裁判で離婚が成立するためには、裁判所に「離婚原因(離婚事由)がある」と認めてもらわなければなりません。
8-2.DVは裁判で離婚原因になるの?
裁判で離婚が認められるには、裁判官が「離婚の原因がある」と認めてもらうことができます。
裁判でDVがあったことを証明できれば、離婚が認められます。
8-3.DVを理由とする離婚で気を付ける点
離婚を切り出す前に別居しましょう
暴力をふるうような夫(妻)の場合、離婚を切り出したとたんにさらに暴力を振るわれる場合が多いです。そのため、まずは、離婚よりも暴力から逃げることを優先しましょう。
緊急性がある場合は、一時保護を利用できます。また、お住いの場所によってはDVを受けている被害者は県営住宅や市営住宅に優先的に入居させてもらえる場合もあります。
協議離婚をする場合は、弁護士に間に入ってもらいましょう
あなたと夫(妻)が直接、離婚について話し合うのは、危険なので弁護士に間に入ってもらうようにした方が良いです。
収入(夫婦の収入の合計ではなく、あなただけの収入です)と所有財産が少ない人については、無料の法律相談を受けられ、また、安く弁護士に依頼でき弁護士費用も借りることができます。
離婚調停を行う場合も弁護士に頼むことが望ましいです
調停離婚とは、家庭裁判所の調停室という部屋で、調停委員という人に夫婦の間に入ってもらって、夫婦で話し合って成立する離婚をさします。
通常の離婚調停では、夫婦が1人ずつ交代で調停室に呼び出されて、調停委員に自分の意見を伝えます。この場合、調停室は1人ずつ入室しますが、調停室に入る前に顔をあわせてしまう可能性があります。
そこで、DVの場合は、あらかじめ調停を行う裁判所に、DVをされていることを伝えれば、全く顔を合わせないようにしてもらうことができます。
具体的には、裁判所に行く時間や帰る時間を相手とずらしてもらう、夫と妻が別々の部屋にいて、そこに調停委員が入るようにして、廊下などでも顔を合わせないようにするといったことをしてもらえます。
なので、調停離婚をする場合は、弁護士に頼まなくてもお互いに顔を合わせないで離婚をすることができます。(調停離婚は弁護士に頼まなくても法律の素人でもすることができます。)
ただ、弁護士に依頼したほうが、加害者に「連絡をするときは私ではなく弁護士にしてください。」ということができるので、相手からの接触を避けることができます。
離婚裁判をする場合は、弁護士に依頼しましょう
調停でも離婚が成立しない場合、離婚裁判を行うことになります。
裁判は法律の知識がないとできないので、弁護士に頼んだ方が良いです。
8.DVを理由に慰謝料請求・損害賠償請求ができる!
慰謝料というのは、精神的な苦痛を味わったことに対する損害賠償請求金です。
DVそのものによる精神的苦痛と、離婚をすることになったことによる精神的な苦痛が生じるため、慰謝料を請求することができるのです。
また、けがの治療費などについても、損害賠償請求をすることができます。