不倫や暴力などの離婚の原因になることの証拠を集めておくことはとても大事です。
ここでは、何が証拠となるのか、どのように集めるのかを説明しています。
1.どうして不倫や暴力の証拠が必要なの?
1-1.証拠がないと離婚できないことがある
裁判で離婚する場合
自分は離婚したくても相手が離婚したくないともめた場合、最後は裁判で離婚するかどうかを決めます。
裁判官は、証拠を見て「この夫婦は離婚する原因がある」と判断した場合は、「離婚を認める」という判決をします。
なので、あなたが「不倫をされました。」「暴力をふるわれました。」と裁判でいっても、その証拠がなければ離婚は認められないのです。
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【離婚の種類】
●協議離婚(きょうぎ・りこん)
…夫婦で話し合って「離婚をします。」と決めて、離婚届を出す離婚の方法。
●調停離婚(ちょうてい・りこん)
…家庭裁判所で、調停委員という男女2人の人に間に入ってもらって、夫婦で話し合いを行う離婚の方法。夫婦で「離婚します。」と決めないと調停離婚はできない。
●裁判離婚(さいばん・りこん)
…夫婦の話合いがまとまらないので、協議離婚も調停離婚もできない場合におこなう裁判で離婚。裁判官が、離婚するかしないか決定する。
話し合いで離婚する場合(協議離婚・調停離婚の場合)
離婚の話合いをする場合(協議離婚・調停離婚)、不倫や暴力などの証拠がなくても、お互いに「離婚しましょう。」と納得すれば、離婚できます。
ただし、離婚するかしないかでもめている場合に、不倫や暴力などの証拠を相手につきつけると、相手が降参して、協議離婚や調停離婚に応じることも多いです。
1-2.証拠がないと慰謝料がもらえないことがある
裁判で離婚する場合
相手の行為によって精神的な苦痛が生じた場合に、その苦痛の大きさに応じて損害賠償請求をすることができます。これを慰謝料といいます。
たとえば、相手の不倫、DVなどの暴力、モラハラなどによって、精神的な苦痛が生じた場合に、相手に対して慰謝料を請求することができます。
離婚裁判で不倫や暴力などの慰謝料を請求する場合は、不倫や暴力などの証拠がなければ、不倫や暴力があったと裁判官は認めてくれないので、「慰謝料を払え」という判決にはなりません。
また、不倫や暴力などの証拠がたくさんあり、裁判官が相手が悪質だと認めた場合は、普通のケースよりも高い慰謝料がもらえます。
【参考】
裁判で認められる慰謝料の額のめやす
(ケースによっては、これよりも低額あるいは高額の場合もあります)
●浮気・不倫= 約100〜500万円
●別居など= 約50〜300万円
●暴力・DV= 約50〜300万円
話し合いで離婚する場合(協議離婚・調停離婚の場合)
話し合いで慰謝料を決める場合は、お互いが納得をすれば、慰謝料の額はどんなに安くてもどんなに高くてもかまいません。慰謝料なしにすることもできます。
ただし、話し合いで、慰謝料を支払うかどうかや慰謝料の額でもめた場合は、不倫や暴力の証拠をつきつけると、降参して慰謝料を払ってくれることも多いです。
なので、不倫や暴力の証拠は自分に有利に離婚するための、切り札として重要なのです。
2.不倫(不貞行為)の証拠
2-1.どんなものが不倫(不貞行為)の証拠になるの?
裁判で不倫(不貞行為)の証拠として認められるためには「夫(妻)と不倫相手の肉体関係を証明できるもの」が必要です。
ただ、1つだけでは、はっきりと肉体関係があったことをを証明できない証拠でも、いろいろな証拠を組み合わせれば、不倫関係があったと証明できます。
また、証拠を多く集めれば、長期間、何回も肉体関係があったことがわかります。そのため、決定的な証拠はもちろん、それだけでは弱い証拠であっても、なるべく多くの証拠を集めるようにしましょう。
2-2.不倫の証拠の例
□不倫相手とのメールやLINE・電話のやりとり
不倫相手とのメールやLINEのやりとりなどに、一緒に泊りがけの旅行をしたことや、ラブホテルに行ったこと、性行為をしたことなど、肉体関係があることがわかる記載がある場合は決定的な証拠になります。
そのような電話を録音した場合も証拠になります。
一緒に食事をした、デートをしたというだけでは、肉体関係があるという証拠になりません。しかし、親しい関係があることがわかるメールやLINEのやりとりなどいろいろな証拠証拠があれば、不倫が認められやすいので、とにかく集めましょう。
□写真・動画
性行為をしている写真や動画は肉体関係があるという決定的な証拠になります。
ホテルの部屋のなかで2人で撮った写真や、ホテルに2人で入る写真などがある場合、肉体関係があると認められやすいです。
しかし、単に2人でデートしている写真などは、それだけでは肉体関係があるとは言えません。ただ、そのような証拠も集めましょう。
□ホテルの領収書やポイントカード
ラブホテルの領収書やポイントカードは肉体関係があったという証拠となります。
ビジネスホテルやシティホテルの領収証は、それがダブルルームやツインルームでも1人で泊まることはあり得るので、それだけでは決定的な証拠になりにくいです。
□クレジットカードの利用明細や領収証
ホテルの明細や領収証などは2人で宿泊したという証拠になる場合もあります。
ただし、レストランの領収書などのデートの証拠や、プレゼントの明細などは、それだけでは肉体関係があったことの証拠となりにくいですが、証拠として集めていきましょう。
□肉体関係があったことを認める発言の録音
夫(妻)や、不倫相手と、不倫について話をする場合には、ボイスレコーダーやスマホの録音機能などで、きちんと録音しておきましょう。
夫(妻)や不倫相手から「〇月〇日、私は〇〇と肉体関係を持ちました」という発言が録音できれば、決定的な証拠になります。
ただ、「浮気した」「不倫した」という言葉だけでは、プラトニックな関係である可能性もあるので、「肉体関係があった」ということを発言させるようにしましょう。
肉体関係があったことを認める文書
夫(妻)が書く場合
〇年〇月〇日に、私は〇〇(不倫相手の名前)と肉体関係を持ちました。
□年□月□日(この文書を作成した日)
□□□□(不倫をした夫(妻)の署名)
不倫相手が書く場合
〇年〇月〇日に、私は〇〇(夫(妻)の名前)と肉体関係を持ちました。
□年□月□日(この文書を作成した日)
□□□□(不倫相手の署名)
夫(妻)でも不倫相手でもどちらか1人でも、このような文書を書かせれば、決定的な証拠になります。
この文書にはこのほかに謝罪の文言や二度としないという文言など、他の言葉を付け足しても大丈夫です。
ポイントは「肉体関係があったことを認める言葉が書いてあること」なので、ただ、「不倫した」「浮気をした」というだけでは不十分です。
もちろん、離婚や慰謝料請求をしようとしていることは、言いません。
うまくいけば、決定的な証拠が作れますよ!
手帳・スケジュール帳・日記・SNS
手帳・スケジュール帳・日記・SNSなどに、肉体関係がわかるような記載があれば、決定的な証拠となります。
日帰りのデートの記載などでも、つみかさねれば証拠になります。
不倫相手の妊娠がわかる証拠
胎児のエコー写真や産婦人科の診療報酬明細書など、不倫相手の妊娠や堕胎がわかる資料は決定的な証拠になります。
カーナビの履歴・交通ICカードの記録・GPS記録
夫(妻)のカーナビの履歴・交通ICカードの利用履歴・GPS記録などから「しょっちゅう不倫相手の家に行っている」ことや、ホテルに行っていることがわかる場合は、その履歴が証拠になります。
相手からもらったプレゼント
相手から不自然に高額な物をもらっていたら、不倫の証拠になる可能性があります。
第三者の証言
不倫の現場を見た人や、不倫関係にあることを知っている人の証言は不倫の証拠になります。
あなたのうつ病などの診断書
不倫の証拠ではありませんが、夫(妻)の不倫が原因であなたがうつ病などの精神的な病気になった場合は、必ず診断書をとっておいてください。
診断書があれば、慰謝料が増額されやすいからです。
2-3.証拠の集め方
録音・撮影
不倫についての話し合いをする際には、スマホやボイスレコーダーでの録音や、隠しカメラでの撮影をしておくとよいと思います。肉体関係を認める発言をした場合、決定的な証拠になります。
また、不倫相手が自宅に来そうな場合は、自宅に隠しカメラなどを設置しておくことも考えられます。
ただし、不倫相手の家に侵入して、証拠を集めることは住居侵入罪という犯罪なので気を付けてください。
証拠の撮影
不倫関係がわかる写真やメールやLINEのやり取りがあった場合は、自分のスマホやカメラで撮影しておきましょう。
また、肉体関係があることが直接わかる言葉がなかったとしても、親しいやり取りが何度もなされていれば、不倫関係にあると認められることもありますから、やりとりはなるべく多く撮影しておきましょう。
文章だけを撮影すると、「自分のLINE(メール)ではない」と否定されてしまうので、スマホ全体をとるようにしてください。いつのやり取りかわかるように、やりとりの日時も撮影してください。
相手のスマホを操作して中の写真やメールを開いているところをビデオ撮影するのもよいと思います。そうすれば、すべての写真やメールが相手のスマホに入っていたことが良くわかると思います。
撮影したデータはなくさないように、バックアップを取っておいてください。
相手のスマホを操作してデーターを自分のスマホに転送したりするのは、相手に気づかれる恐れがあるのでやめた方が良いでしょう。
また、相手のスマホに「浮気発見アプリ」など入れておくのは、犯罪になる可能性が高いのでやめましょう。
書類のコピー
相手の手帳や日記、クレジットカードの明細など、証拠となる書類は持ち出すと相手に気づかれてしまう恐れがあります。
なので、現物を証拠とするのではなく、コピーをとって保管するようにしてください。
2-4.探偵や興信所に依頼すべき?
調査員の人数などにもよりますが、探偵や興信所に調査を依頼すると料金相場は10~30万円は見ておく必要があります。
不倫現場を何日もの間尾行する場合は100万円程度かかってくることもあります。
したがって、料金と効果を考えて、依頼するようにしてください。
3.暴力(DV)の証拠
3-1.DVってなに?
相手方への身体的暴力(けがをさせる危険があるような行為は、実際にけがをしなくても暴力です。物を投げる、凶器を突きつけるような場合も含まれます)、精神的暴力(相手の心を傷つける無視や脅し、どなるなど)、性的暴力(性行為の強要など)、経済的暴力(生活費を渡さないなど)、社会的暴力(家族や友人との付き合いを制限するなど)はDVです。
DVがあったと認められれば、裁判で離婚できますし、相手に慰謝料を請求できます。
3-2.離婚の準備をする前にまずはDVの相談をしましょう
DVの相談をしたい場合
DV相談ナビ→0570-0-55210
DVについての相談にのってくれます。あなたの住んでいる場所の支援窓口も教えてくれます。
DVの加害者から逃げたい場合
日本全国の市区町村にある「配偶者暴力相談支援センター」に相談してください。
相談だけでもできます。
そのまま加害者と一緒にいると、逃げる気力がなくなってしまいます。
配偶者暴力支援センターの一覧は→こちら
暴力を振るわれたら警察へ
自分や子どもが危険な場合は、警察に相談しましょう。
3-3.DVの証拠の例
□けがの写真
けがの写真を撮る場合は、誰の写真かわかるように、傷の写真だけでなく、顔と傷がいっしょに写っているいる写真も撮りましょう。
また、いつの写真かわかるようにその日の新聞やテレビなども写すようにするとよいです。
□けがで病院に行った際の診断書
診断書を作成してもらう際には、きちんとDVが原因であることを医師に伝えましょう。
医師によっては診断書に「DVによる傷」と記載してもらえることもあります。
□DVが原因で心が病んでしまった場合は精神科・心療内科の診断書
DVが原因で精神的な病気になった場合は、DVの証拠となります。
この場合も、書いてもらえるなら「DVによって生じた精神的な病気」であるということを診断書に書いてもらいましょう。
□加害者が壊した物の写真・動画
加害者が壊した家財道具、穴が開いた壁などがあれば、加害者が暴れたという証拠になるので、写真や動画で撮影しておきましょう。
□DVをしている動画や音声
ビデオやボイスレコーダー、スマホの録音・録画機能を使って、相手の暴力・暴言を隠し撮りしておけば、有力な証拠になります。
ただ、隠し撮りが相手に見つかった場合、さらにDVが行われる可能性があるので、気を付けてださい。
□加害者からのLINEやメール、電話の録音
相手からのLINEやメールからDVがあったことがわかる場合は、送信取り消しがされないように、LINEやメールのスクショをしておきましょう。
相手からの電話は録音しておきましょう。
□どのようなDVが行われたのか記載した日記やメモ
相手からどのようなDVが行われたのかをその都度、日記やメモに記載していた場合は、それも証拠となります。PCやスマホでの日記は、後で簡単に書き変えられるので、証拠として弱いです。できれば、その都度、手書きでメモしておきましょう。