相手を問い詰めると、証拠をかくされて「浮気していない」とごまかされてしまうからです。
妻が不倫をした場合については、ここに書かれている「夫」と「妻」を入れ替えて読んでください。
1.不倫の証拠がないと、こんな時に後悔する!
□不倫をした夫が離婚をしたくない場合は、不倫の証拠を集めて不倫を証明しないと、離婚ができないことがあります。
□不倫の証拠を集めて不倫を証明しないと、不倫をした夫に慰謝料を請求できない可能性があります。
□不倫の証拠を集めて不倫を証明しないと、不倫相手に慰謝料を請求できない可能性があります。
2.不倫が原因での離婚ができる場合・できない場合は?
離婚には、大きく分けて3つの種類があります。
①協議離婚
夫婦で話し合って、離婚届を提出し成立する離婚
②調停離婚
家庭裁判所の調停室という部屋でで、調停委員という人に夫婦の間に入ってもらって、夫婦で話し合って成立する離婚
③裁判離婚
夫婦の話し合いがまとまらない場合に裁判で成立する離婚
2-1.協議離婚・調停離婚は離婚原因がなくても離婚できる
協議離婚や、調停離婚は夫婦で話し合って、お互いが離婚をすると決めれば離婚は成立します。ですから、不倫などの離婚の原因がなくても、お互いが納得すれば離婚できます。
2-2.離婚原因があると認められないと裁判離婚はできない
夫婦の一方がどうしても離婚したくない場合に、離婚するには裁判をしなければなりません。裁判離婚を成立させるためには、裁判所に「離婚原因(離婚事由)がある」と認めてもらわなければなりません。
2-2.不倫は裁判で離婚原因になるの?
夫婦で「離婚したい」「離婚したくない」ともめている場合、裁判所が「民法で定められている『離婚事由』がある」と認めた場合でなければ、離婚できません。
「不貞行為」は、このように民法で定められている「離婚事由」の1つです。
2-3.不貞行為ってなに?
「不貞行為」は、異性と性的な関係を持った場合を指します。
プラトニックな恋愛は、不貞行為になるの?
肉体関係がなければ、不貞行為になりません。
不特定の異性との売春・買春は不貞行為になるの?
恋愛感情はなくても、異性との性的関係を持つことは不貞行為になります。
1度だけでも不貞行為になるの?
肉体関係の回数は関係なく、1度だけでも不貞行為になります。
レイプされたような場合は不貞行為になるの?
不貞行為になりません。自分の自由な意思で肉体関係を持つことが必要です。
別居中に不倫をした場合は不貞行為になるの?
すでに夫婦関係がこわれており別居中に、異性と肉体関係を持った場合は、不貞行為になりません。
2-4.不貞行為があれば、必ず裁判で離婚できるの?
不貞行為があっても、本人が反省し、信頼を取り戻す努力をしている場合などは、夫婦関係を修復できる見込みがあるため、離婚が認められないケースもあります。
2-5.不貞行為がなければ、裁判で離婚できないの?
「不貞行為」に当たらない場合であっても、夫婦関係が壊れており、修復できないくらいになっていると裁判所に認められば、裁判離婚が成立する場合もあります。
例えば、プラトニックな恋愛などは、「不貞行為」ではありませんが、裁判離婚が認められる場合もあります。
3.不倫を理由に慰謝料請求ができる場合とは?
慰謝料というのは、精神的な苦痛を味わったことに対する損害賠償請求金です。
相手の不倫(不貞行為)で離婚をする場合、精神的な苦痛を味わったといえるため慰謝料を請求できますし、離婚しなくても相手の不倫(不貞行為)があれば精神的な苦痛を味わったといえるため、慰謝料を請求することができます。
3-1.誰に慰謝料請求ができるの?
不倫をした夫と、不倫相手の両方に慰謝料を請求することができます。
また、夫だけ、不倫相手だけに慰謝料を請求することができます。
裁判で慰謝料を請求する場合、夫(妻)と不倫相手の両方に慰謝料請求をすることができまずが、夫(妻)から、一般的な額の慰謝料が支払われた場合は、それで充分であるとして、さらに不倫相手への慰謝料請求は認められないことが多いです。
逆に、不倫相手から一般的な額の慰謝料が支払われた場合は、それ以上、夫(妻)への慰謝料請求は認められないことが多いです。
協議離婚・調停離婚の場合は、お互いの意思が重要なので、お互いに慰謝料の支払いをすると決めれば、いくらの慰謝料の約束をしてもかまいません。
なので、不倫をした夫と妻が話し合って高額な慰謝料の取り決めをし、妻と不倫相手が話し合って高額な慰謝料の取り決めをした場合、その取り決め通り、妻は夫と不倫相手の両方から高額な慰謝料をもらえることになります。
3-2.既婚者だと知らないで付き合っていた不倫相手にも慰謝料請求ができるの?
不倫相手が、夫を独身だと思って付き合っていた場合には、不倫相手には慰謝料請求はできません。この場合の不倫相手は加害者だと言えないからです。
もちろん、独身のふりをしていた夫には、慰謝料請求はできます。
3-3.別居中に不倫をした場合、慰謝料請求はできるの?
夫婦関係がこわれて別居している間にに不倫をした場合は、夫にも不倫相手にも、不倫を理由とした慰謝料請求はできません。
すでに夫婦関係が壊れているなら、そのあとに不倫をされても、精神的苦痛は生じないと考えられるからです。
4.不倫の慰謝料はいくらもらえるの?
4-1.お互いに話し合って慰謝料の額を決める場合
協議離婚や調停離婚で慰謝料を決める場合、お互い決めた金額なら、いくらにしてもかまいません。
金額でもめた場合は、同じようなケースで裁判では通常いくらの慰謝料が認められるかを目安にするといいですよ。
4-2.裁判で慰謝料を請求して金額が決められる場合
慰謝料の金額に明確な基準はなく、さまざまな事情を考慮して、決まります。裁判所は、過去の似たようなケースの判例などを参考に金額を決めます。
裁判の場合の夫への不倫の慰謝料の目安
*ケースによって異なるのであくまでも目安です。
不倫はあったが離婚しない場合=数十万円~100万円
離婚をしない場合でも、不倫をされれば精神的な苦痛が生じるので、不倫をした夫に慰謝料を請求することができます。
不倫が原因で離婚する場合=100万円~300万円
不倫が原因で離婚する場合は、離婚しない場合よりも精神的な苦痛が大きいといえますから、慰謝料の額は大きくなります。
裁判の場合の慰謝料の金額に影響すること
慰謝料の金額は、様々な事情で変わってきます。
〇結婚の期間が長いと増額される
結婚の期間が長いほど、不倫により夫婦関係を壊した場合の慰謝料は増額されます。
〇不倫前の夫婦関係円満だと増額される
不倫前の夫婦関係が円満だった場合、それを壊した場合の慰謝料は増額されます。
不倫前から、すでに、夫婦関係が良くなかった場合は、慰謝料は減額されますし、夫婦関係が壊れて別居した後に不倫した場合は、慰謝料請求自体が認められにくいです。
〇自分も落ち度がある場合は減額される
自分も過去に不倫をしていた、DVをしていたなど、相手が不倫をするようになった原因が自分自身にもある場合は、慰謝料は減額されやすいです。
〇不倫の期間が長い場合、回数が多い場合は増額される
不倫の期間が10年以上など長期間の場合は,慰謝料の増額されやすいです。
〇不倫を認めない場合は増額される
不倫の証拠があり、不倫があったと認められるにもかかわらず、夫が不倫を認めない場合は、悪質であるといえるため慰謝料が増額されやすいです。
〇もう不倫をしないという約束をしていたのに違反した場合は、増額される
以前も不倫をして、二度としないと約束をしていたにもかかわらず、ふたたび不倫した場合は、悪質であるため、慰謝料が増額されやすいです。
〇不倫相手が子どもを妊娠した場合、増額される
夫と不倫相手との間に子どもができた場合、精神的な苦痛は大きいので、慰謝料は増額されやすいです。
〇自分が精神的苦痛を受けたという証拠がある場合は、増額される
不倫によるショックでうつ病になった場合などに、その証拠(診断書など)があると、増額されやすいです。
〇夫婦間に子どもがいる場合の方が増額される
夫婦間に子どもがいる場合は、夫婦関係が壊れたことによる影響が大きいですし、離婚による精神的な苦痛も大きいため、増額されやすいです。
〇不倫相手への慰謝料請求の場合
既婚者だと知らずに不倫相手が肉体関係を持った場合は、不倫相手には慰謝料を請求することはできません。この場合は、もちろん、夫には慰謝料請求ができます。
逆に、既婚者と知りながら家庭を壊すつもりで肉体関係をもった場合は、行為が悪質であるため、不倫相手への慰謝料は増額されやすいです。
不倫相手が謝罪していたり、社会的制裁(退職など)を受けていたりする場合は,慰謝料が減額されることがあります。
5.不倫の証拠は?集め方は?
5-1.離婚の成立や慰謝料請求に不倫(不貞行為)の証拠は必要?
裁判で離婚を請求する場合や慰謝料を請求する場合
夫が不倫(不貞行為)をしたという証拠がなければ、不倫(不貞行為)を原因とする離婚も、不倫(不貞行為)による慰謝料請求も認められにくいです。
話し合いで離婚をする場合や、慰謝料を請求する場合
不倫(不貞行為)の証拠がなくても、相手が不倫(不貞行為)を認めなくても、夫婦で離婚をすることに合意すれば、離婚は成立します。
また、不倫(不貞行為)の証拠がなくても、相手が不倫(不貞行為)を認めなくても、「〇〇円の慰謝料を払います」と決めれば、その金額を支払うことになります。
なので、協議離婚や調停離婚ができそうな場合であっても、きちんと不倫の証拠を集めておきましょう。
5-2.何が不倫(不貞行為)の証拠になるの?
不倫(不貞行為)の証拠は「夫と不倫相手の肉体関係を証明できるもの」が必要です。
ただ、はっきり肉体関係を証明できない証拠でも、複数を組み合わせれば、不倫関係があったと証明できます。
また、証拠を多く集めれば、長期間、何回も肉体関係があったことがわかるため、離婚しやすいですし、慰謝料も高くなりやすいです。
そのため、決定的な証拠はもちろん、それだけでは弱い証拠であっても、なるべく多くの証拠を集めるようにしましょう。
先に不倫について問い詰めると、否定されて、証拠を隠されてしまいます。
こっそり、証拠を集めていきましょう。
不倫相手とのメールやLINE・電話のやりとり
不倫相手とのメールやLINEのやりとりなどに、一緒に泊りがけの旅行をしたことや、ラブホテルに行ったこと、性行為をしたことなど、肉体関係があることがわかる記載がある場合は決定的な証拠になります。
そのような電話を録音した場合も証拠になります。
一緒に食事をした、デートをしたという記載は、それだけでは肉体関係があるという証拠になりません。しかし、親しい関係があることがわかるメールやLINEのやりとりは積み重ねれば証拠となるので、とにかく集めましょう。
写真・動画
性行為をしている写真や動画は肉体関係があるという決定的な証拠になります。
ホテルの部屋のなかで2人で撮った写真や、ホテルに2人で入る写真などがある場合、肉体関係があると認められやすいです。
しかし、単に2人でデートしている写真などは、それだけでは肉体関係があるとは言えません。ただ、そのような証拠も集めましょう。
ホテルの領収書やポイントカード
ラブホテルの領収書やポイントカードは肉体関係があったという証拠となります。
ビジネスホテルやシティホテルの領収証は、それがダブルルームやツインルームでも1人で泊まることはあり得るので、それだけでは決定的な証拠になりにくいです。
クレジットカードの利用明細や領収証
ホテルの明細や領収証などは2人で宿泊したという証拠になる場合もあります。
ただし、レストランの領収書などのデートの証拠や、プレゼントの明細などは、それだけでは肉体関係があったことの証拠となりにくいですが、証拠として集めていきましょう。
肉体関係があったことを認める発言の録音
夫や、不倫相手と、不倫について話をする場合には、ボイスレコーダーやスマホの録音機能などで、きちんと録音しておきましょう。
夫や不倫相手から「〇月〇日、私は〇〇と肉体関係を持ちました」という発言が録音できれば、決定的な証拠になります。
単に、「浮気した」「不倫した」という言葉だけでは、プラトニックな関係である可能性もあるので、「肉体関係があった」ということを発言させるようにしましょう。
肉体関係があったことを認める文書
夫が記載する場合
〇年〇月〇日に、私は〇〇(不倫相手の名前)と肉体関係を持ちました。
□年□月□日(この文書を作成した日)
□□□□(不倫をした夫の署名)
不倫相手が記載する場合
〇年〇月〇日に、私は〇〇(夫の名前)と肉体関係を持ちました。
□年□月□日(この文書を作成した日)
□□□□(不倫相手の署名)
夫でも不倫相手でもどちらでもかまいませんが、このような文書を作成させれば、決定的な証拠になります。
この文書にはこのほかに謝罪の文言や二度としないという文言を入れるなどして、付け足してもかまいません。
ポイントは肉体関係があったことを認める点ですので、ただ、「不倫した」「浮気をした」というだけでは不十分です。
うまくいけば、決定的な証拠が作れますよ!
手帳・スケジュール帳・日記・SNS
手帳・スケジュール帳・日記・SNSなどに、肉体関係がわかるような記載があれば、決定的な証拠となりますが、日帰りのデートの記載などでも、積み重ねれば証拠となります。
不倫相手の妊娠がわかる証拠
胎児のエコー写真や産婦人科の診療報酬明細書など、不倫相手の妊娠や堕胎がわかる資料は決定的な証拠になります。
カーナビの履歴・交通ICカードの記録・GPS記録
夫(妻)のカーナビの履歴・交通ICカードの利用履歴・GPS記録などから「しょっちゅう不倫相手の家に行っている」ことや、ホテルに行っていることがわかる場合は、その履歴が証拠になります。
相手からもらったプレゼント
相手から不自然に高額な物をもらっていたら、不倫の証拠になる可能性があります。
第三者の証言
不倫の現場を見た人や、不倫関係にあることを知っている人の証言は不倫の証拠になります。
あなたのうつ病などの診断書
不倫の証拠ではありませんが、夫の不倫が原因であなたがうつ病などの精神的な病気になった場合は、必ず診断書をとっておいてください。
診断書があれば、慰謝料が増額されやすいからです。
5-3.証拠の集め方
録音・撮影
不倫についての話し合いをする際には、スマホやボイスレコーダーでの録音や、隠しカメラでの撮影をしておくとよいと思います。肉体関係を認める発言をした場合、決定的な証拠になります。
また、不倫相手が自宅に来そうな場合は、自宅に隠しカメラなどを設置しておくことも考えられます。
ただし、不倫相手の家に侵入して、証拠を集めることは住居侵入罪という犯罪なので気を付けてください。
証拠の撮影
不倫関係がわかる写真やメールやLINEのやり取りがあった場合は、自分のスマホやカメラで撮影しておきましょう。
また、肉体関係があることが直接わかる言葉がなかったとしても、親しいやり取りが何度もなされていれば、不倫関係にあると認められることもありますから、やりとりはなるべく多く撮影しておきましょう。
言葉だけを撮影すると、「自分のLINE(メール)ではない」と否定されてしまうので、スマホ全体をとるようにしてください。いつのやり取りかわかるように、やりとりの日時も撮影してください。
相手のスマホを操作して中の写真やメールを開いているところをビデオ撮影するのもよいと思います。そうすれば、すべての写真やメールが相手のスマホに入っていたことが良くわかると思います。
撮影したデータはなくさないように、バックアップを取っておいてください。
相手のスマホを操作してデーターを自分のスマホに転送したりするのは、相手に気づかれる恐れがあるのでやめた方が良いでしょう。
また、相手のスマホに「浮気発見アプリ」など入れておくのは、犯罪になる可能性が高いのでやめましょう。
書類のコピー
相手の手帳や日記、クレジットカードの明細など、証拠となる書類は持ち出すと相手に気づかれてしまう恐れがあります。
なので、現物を証拠とするのではなく、コピーをとって保管するようにしてください。
5-4.探偵や興信所に依頼すべき?
調査員の人数などにもよりますが、一般的に探偵や興信所に調査を依頼すると、浮気をしているかどうか調査するだけの簡単な内容であれば10~20万円程度かかります。
一般的に裁判で使えるような証拠を集める場合は30~70万円程度のかかるといわれています。
したがって、料金と効果を考えて、依頼するようにしてください。