なので、まずはどんな種類の離婚の方法があるかを知り、自分はどの方法をとるのかを考えましょう。
1.協議離婚・調停離婚・裁判離婚とは?
【離婚の種類】
- 協議離婚(きょうぎ・りこん)
…夫婦で話し合って「離婚する」と決めて、離婚届を出す離婚の方法。 - 調停離婚(ちょうてい・りこん)
…家庭裁判所で、調停委員という男女2人の人に間に入ってもらって、夫婦で話し合いを行う離婚の方法。夫婦で「離婚する」と決めないと調停離婚はできない。 - 裁判離婚(さいばん・りこん)
…夫婦の話合いがまとまらないので、協議離婚も調停離婚もできない場合におこなう裁判で離婚。裁判官が、離婚するかしないか決定する。
2.まずは協議離婚を考えましょう
2-1.協議離婚を選んだ方が良い場合
離婚全体の約90%が協議離婚です。
離婚の3つの方法の中で、1番、時間も費用もかからないので、夫婦の話し合いでまとまりそうな場合は、協議離婚の方法をとることになります。
2-2.離婚の条件でもめる場合は先に離婚届を出さない方が良い
△先に離婚届を出して、後から離婚の条件(慰謝料や財産分与や養育費など)を決める
→そのような方法をとることはできるけれど、やらない方がいいです。
先に離婚届をだすと相手から逃げられて、お金を請求できなくなってしまうことも多いからです。
◎夫婦で「離婚する」と決めても、離婚の条件が決まるまで、離婚届を出さない
→離婚の条件が決まるまで、話し合いを続けるか、2人だけの話しあいで決めるのが難しそうなら、離婚調停をした方がいいです。
3.調停離婚
離婚全体の約10%が調停離婚です。
夫婦で話し合って離婚届けを提出すること(協議離婚)が難しい場合に調停離婚が行われます。
相手が離婚に応じない場合だけではなく、
離婚自体は夫婦の両方とも了解しているけれども、離婚の条件(子の親権や財産分与の額など)でもめていて2人の話し合いで解決できそうもない場合も離婚調停ができます。
調停では、家庭裁判所が何か命令したり判決をしたりすることができるわけではありません。夫婦で「調停離婚する」と決めなければ成立しません。
なので、夫婦でもめている場合は、離婚するには裁判をすることになります。
4.裁判離婚
離婚全体の約1%が裁判離婚です。
離婚調停でも話し合いがまとまらない場合、夫婦の一方が家庭裁判所に離婚の訴え(=離婚訴訟)をおこす事を離婚裁判といいます。
夫婦だけの話し合いがまとまらず、協議離婚が成立しない場合であっても、いきなり離婚裁判をすることはできません。
離婚裁判をする前には、必ず離婚調停をしなければならないと決められているのです。
そして、離婚調停がうまくいかない場合に、初めて離婚訴訟をすることができます。
離婚裁判の流れ
夫婦のどちらかが家庭裁判所で離婚調停の申し込みをする
↓
離婚調停で話し合いがまとまらず不成立
↓
夫婦のどちらが離婚裁判を申し込む
↓
判決で離婚が成立
5.協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違い
名称 | 内容 | かかる期間 | かかる費用 | 弁護士は必要か | 離婚後に決められた金銭が支払われない場合 |
---|---|---|---|---|---|
協議離婚 | 夫婦で話し合って離婚届を提出 | 合意が成立し、離婚届を提出すればすぐに成立 | 0円 (+弁護士費用) |
なくてもOK 複雑なケースやDV・ストーカーなどで相手に会えない場合は必要 |
協議離婚の際に、強制執行認諾文書付きの公正証書を作成しておかないと、相手の財産を差し押さえて回収できない |
調停離婚 | 調停委員が夫婦の間に入って、話し合いを仲介。夫婦が合意すれば離婚が成立。 | 3か月から1年 | 数千円 (+弁護士費用) |
なくてもOK 複雑なケースなどは必要 |
相手の財産を差し押さえて回収できる |
裁判離婚 | 裁判(ただし、裁判の前に必ず離婚調停が必要) | 約1年 | 数万円 (+弁護士費用) |
弁護士に依頼しないと難しい | 相手の財産を差し押さえて回収できない |
6.協議離婚と調停離婚の違い・どちらを選ぶか
そこでまず、協議離婚と調停離婚のどちらの方法をとるかを考えてください。
もちろん、まず、離婚の話し合いをした後で、話し合いがまとまらなかった場合には離婚調停をするという方法をとることもできます。
5-1.調停委員という人が間に入ってくれるのは調停離婚
協議離婚
2人だけで話し合います。
調停離婚
調停委員という第三者が間に入って、夫と妻から交互に話を聞いて離婚や離婚の条件の合意をします。
そのため、冷静に話し合いをすることができます。
また、DVやモラハラ、ストーカーなど相手と顔を合わせたくない場合は顔を合わせずに離婚を成立させることができます。
ただ、協議離婚でも弁護士に依頼する場合は、相手との連絡や話し合いはすべて弁護士にやってもらい、相手と顔を合わせずに離婚をすることができます。
5-2.離婚が成立するまでの期間は協議離婚の方が短い
協議離婚
話し合いがまとまり、離婚届を提出すればすぐに成立
調停離婚
3か月から1年くらい
また、調停は平日の昼間に行われるので、仕事がある人は調整しなければなりません。
5-3.離婚後の戸籍の記載のちがい
協議離婚
戸籍には「離婚届を提出、受理した」とだけ記載されます。
調停離婚
戸籍には、「家庭裁判所にて調停の上、離婚した」と記載されます。
そのため、戸籍を見たときに、協議離婚よりも調停離婚の方がもめて別れたという印象を持たれる可能性があります。
5-4.離婚後にお金が支払われない場合の手段のちがい
養育費や慰謝料や財産分与などのお金が支払われない場合は、裁判所に相手の財産を差し押さえてもらって、そこから支払いをうけること(=強制執行)ができます。
「あいつは自分に借金がある」と裁判所にうそを言って、強制執行をするようなことは許されません。そのため、裁判所に強制執行を依頼する場合には、相手が本当にそのような支払い義務があるのかを証明する必要があるのです。
協議離婚の後で養育費・慰謝料・財産分与などのお金の支払いがない場合の強制執行
【離婚届を出して協議離婚をしただけの場合】
さらに裁判をして、「本当に〇〇円の支払い義務がある」という判決をもらった後でないと、強制執行をすることはできません。
【協議離婚のときに、強制執行認諾文書付きの公正証書を作成していた場合】
協議離婚のときに、「強制執行認諾文書(きょうせいしっこうにんだくぶんしょ)付きの公正証書というものを作成することができます。
これは、養育費・慰謝料・財産分与などについて、どのような条件で離婚をするのかを文書にして(これを離婚協議書といいます)、公証役場というところに持って行って、公正証書を作成することができます。
ただ、弁護士に頼まない場合は、自分で公正証書の文章を作らなければならないので、苦手な人には大変かもしれません。
協議離婚をする際には、公正証書を作成しないと損をしますを参考に、自分でできるそうか考えてみるといいと思います。
調停離婚の後で養育費・慰謝料・財産分与などのお金の支払いがない場合の強制執行
調停離婚が成立すると、必ず調停証書というものが作成されます。
離婚調停のときに、養育費・慰謝料・財産分与などについてきちんととり決めをして、その調停証書に養育費・慰謝料・財産分与の金額を書いてもらった場合、その調停証書があれば、強制執行をすることができます。
つまり、調停離婚の場合は、調停できちんと養育費・慰謝料・財産分与などについてとり決めをすれば、それだけで支払いがない場合は強制執行をすることができます。
7.裁判離婚をしなければならない場合
7-1.離婚するかどうかや離婚の条件でもめる場合は裁判離婚
「離婚したい」「離婚したくない」でもめる場合は、協議離婚や調停離婚はできません。どうしても離婚したければ裁判をするしかありません。
夫婦で「離婚する」と決めれば、養育費・慰謝料・財産分与などの離婚の条件でもめても、協議離婚や調停離婚をすることができます。
しかし、養育費・慰謝料・財産分与などの離婚の条件を決めずに、先に協議離婚や調停離婚をしてしまうと、相手に逃げられてしまうおそれがあります。そのため、夫婦で「離婚する」と決めても、離婚の条件が決まらなければ、裁判をした方が良いです。
なので、夫婦で「離婚する」と決めても、親権でもめている場合は、協議離婚・調停離婚をすることはできません。離婚するには裁判をして、裁判所で親権者を決めてもらうしかありません。
7-2.相手に離婚する原因がなければ裁判で離婚は成立しない
裁判で離婚が成立するためには、裁判官が「離婚する原因がある」と判断しなければなりません。
したがって、裁判所が認めてくれるくらいの離婚原因がなければ、離婚できません。
また、自分に離婚原因がある場合(自分が不倫した場合など)は、自分から裁判をしても離婚は認められません。相手が離婚裁判をしなければ、離婚できません。
ただ、長期間、別居している場合は、裁判で離婚が認められることがあります。自分に離婚原因がある場合は10~20年くらい、どちらにも離婚原因ない場合は5~10年くらい別居していると、離婚が認められやすいです。
7-3.弁護士に依頼しない場合は、裁判をしない方が良い
弁護士に頼まなくても離婚裁判をすることはできます。
ただ、裁判の手続きは複雑ですし、法律の知識がなければ勝つことが難しいので、弁護士に頼まない場合は、裁判をしない方が良いです。
7-4.短期間で解決したい場合は裁判をしない方が良い
裁判で離婚が成立するには、約1年~2年程度かかります。
なので、早く解決したい場合は裁判をしない方が良いです。
7-5.離婚の事情について絶対に公開されたくない場合は裁判をしない方が良い
裁判は、基本的に公開され、誰でも傍聴(裁判所に入って裁判の内容を聞くこと)ができます。
離婚裁判では、証拠や書面が提出され、そこには夫婦のプライベートな内容が記載されまが、裁判で証拠や書面が読み上げられることはありません。
しかし、裁判で夫婦や証人に対して質問がされる際には、それが裁判を見に来ている人(傍聴人)に聞かれてしまいます。(聞かれないようにする手続きが取れる場合もあります。)
なので、夫婦の事情について他の人に絶対に知られたくない場合は、裁判をしない方が良いです。