しっかり、請求できるように準備しましょう。
1.慰謝料ってなに?
1-1.慰謝料とは
相手の行為によって精神的に苦痛が生じた場合に、その苦痛の大きさに応じて損害賠償請求をすることができます。これを慰謝料といいます。
1-2.どんな場合に慰謝料を請求することができるの?
例えば、相手の不倫、DVなどの暴力、モラハラなどによって、精神的な苦痛が生じた場合に、相手に対して慰謝料を請求することができます。
1-3.誰に慰謝料を請求することができるの?
夫・妻
夫が不倫、DVなどの暴力、モラハラなど、妻を傷つける行為をした場合は、妻が夫に慰謝料を請求できます。
逆に、妻が夫を傷つける行為をした場合は、夫が妻に慰謝料を請求することができます。
不倫相手
不倫相手に慰謝料が請求できるのは、夫(妻)が既婚者であると知りながら肉体関係を持った場合です。
不倫相手が夫(妻)を既婚者だと知らなかった場合は、慰謝料請求は認められにくいです。肉体関係がない場合も慰謝料請求は認められにくいです。
また、離婚前に別居している間など、夫婦関係が壊れてしまった後に、不倫が始まった場合も、不倫相手の存在が離婚原因ではないため、慰謝料請求は認められにくいです。
姑などの親族
姑などの親族から肉体的暴力やひどい言葉のいじめがあったような場合は、姑などの親族に対して、慰謝料請求をすることができます。
1-4.離婚をしなくても慰謝料は請求できるの?
不倫やDVなどの場合、離婚をしなくても、夫(妻)や、その浮気相手に対して慰謝料を請求することができます。
ただ、離婚した場合の方が、離婚自体によって精神的に傷ついたといえるので、慰謝料の金額は大きくなります。
2.慰謝料を請求できない場合とは?
2-1.相手に責任があると言えない場合
相手が不倫をしたが、その前にすでに夫婦関係が壊れていた場合(不倫の前に5年以上別居していたなど)は、不倫によって夫婦関係が壊れたといえないので相手に責任がなく、慰謝料を請求することはできません。
この場合は、不倫相手にも慰謝料を請求することはできません。
また、性格の不一致が離婚原因で夫婦どちらかに離婚の責任があるとは言えない場合も、慰謝料請求が認められません。
2-2.相手に支払い能力がない場合
夫婦で話し合って慰謝料を払うことを決めたり、裁判で慰謝料を支払う判決が下されたりしても、相手に支払能力がない場合や差し押さえられる財産がない場合には、実際に支払わせることは困難です。
2-3.相手が生活保護を受けている場合
相手が生活保護を受けている場合でも、夫婦で話し合って慰謝料を払うことを決めることはできます。また、裁判で慰謝料を支払う判決が下されることもあります。
しかし、相手方が生活保護の受給者である場合、生活保護費に対して、差し押さえや強制執行はできないため、実際に支払わせることは困難です。
3.離婚の慰謝料の金額
3-1.話し合いで慰謝料を決める場合の慰謝料の金額
協議離婚や調停離婚の際に、夫婦で話し合って慰謝料を決める場合、離婚の後で夫婦で話し合って慰謝料を決める場合は、夫婦が2人とも納得すれば慰謝料の金額はいくらでもよいのです。
夫婦双方で決めたのであれば、1円でも1億円でもかまいません。
3-2.裁判で慰謝料を決める場合
離婚裁判で慰謝料の金額を決める場合や、先に離婚は成立したが慰謝料でもめる場合など、慰謝料の請求について夫婦で話し合いがまとまらなかった場合には、最終的には裁判で慰謝料の額が定められることになります。
ここでは、裁判官が過去の裁判の似ているケースを参考に、慰謝料の額を決めます。
3-3.裁判での慰謝料のめやすは?
浮気・不倫 | 約100〜500万円 |
別居など(悪意の遺棄) | 約50〜300万円 |
DV | 約50〜300万円 |
性行為の拒否 | 約0〜100万円 |
3-4.離婚の慰謝料はどのような事情で判断されるの?
弁護士に相談する場合や、相手と慰謝料の話合いをする場合には、これらの事情があることをきちんと伝えるようにしてください。
また、これらの事情があることがわかる証拠を準備するようにしてください。
慰謝料を高くする事情
□原因を作った相手の責任の大きさ
不倫の期間が長い、不倫相手との間に子どもができた、何度も暴力をふるうなど、相手の責任が大きいと慰謝料が高額になりやすいです。
□精神的苦痛や肉体的苦痛の大きさ
DVによるけがが重症である、夫(妻)が原因で鬱になったなど、苦痛が大きい場合は請求額が高額になりやすいです。
□婚姻期間の長さ
婚姻期間が長いと精神的苦痛の度合いは大きいとされ、慰謝料が高額になりやすいです。
□相手の経済力や社会的地位の高さ
相手の財産や収入、社会的地位がが高いほど、慰謝料が高額となりやすいです。
□未成年の子どもの数
未成年の子どもがいる場合は慰謝料が高額になりやすいです。未成年の子どもの人数が増えればば、さらに高額になります。
慰謝料を安くする事情
□慰謝料請求をする側にも問題がある
夫の不倫を理由に慰謝料を請求する場合に、妻の側も不倫をしていた場合などは、慰謝料が安くなるかそもそも慰謝料請求が認められません。
□財産分与が高額な場合
相場より高額な財産分与がなされる場合などは、慰謝料の額はその分、安くなることもあります。
4.慰謝料の請求は弁護士に依頼したほうがいいの?
4-1.慰謝料の額だけでも弁護士に聞きましょう
慰謝料の額は、ケースごとで全く異なり、一般の人に自分のケースはいくらの慰謝料が妥当かの判断をするのは難しいと思います。
なので、法律相談で慰謝料の額のめやすだけでも聞いた方が良いと思います。
4-2.話し合いで慰謝料について決める場合(協議離婚・調停離婚)
お互いに慰謝料の額でもめる可能性が低いのであれば、弁護士に依頼しなくてもよいと思います。協議離婚や調停離婚は弁護士に頼まなくてもできます。
4-3.裁判で慰謝料を請求する場合
裁判を行うには法律の知識が必要なので、弁護士に頼んだ方が良いと思います。
5.慰謝料を請求する手続
5-1.離婚の際に慰謝料を請求する方法
離婚の方法(協議離婚・調停離婚・裁判離婚)などで、慰謝料を請求する手続きが異なります。
←協議離婚・調停離婚・裁判離婚とは何かを知りたい方は開く
【離婚の種類】
●協議離婚(きょうぎ・りこん)
…夫婦で話し合って「離婚をします。」と決めて、離婚届を出す離婚の方法。
●調停離婚(ちょうてい・りこん)
…家庭裁判所で、調停委員という男女2人の人に間に入ってもらって、夫婦で話し合いを行う離婚の方法。夫婦で「離婚します。」と決めないと調停離婚はできない。
●裁判離婚(さいばん・りこん)
…夫婦の話合いがまとまらないので、協議離婚も調停離婚もできない場合におこなう裁判で離婚。裁判官が、離婚するかしないか決定する。
協議離婚を行う際に慰謝料も請求する方法
協議離婚を行う際に慰謝料も請求する場合は、離婚の話し合いの中で慰謝料の金額も決めます。
慰謝料の額については、法律上の決まりはないので、金額・支払方法・支払期限などについて夫婦で自由に決めることができます。
その際に、決めたことは、離婚協議書を作成し、公正証書にしたほうがよいです。
調停離婚を行う際に慰謝料も請求する方法
協議離婚がまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
調停離婚も夫婦で話し合って離婚を決めるので、金額・支払方法・支払期限などについて夫婦で自由に決めることができます。
裁判離婚(離婚裁判)で慰謝料を請求する場合
調停でも解決ができない場合は、離婚裁判の際に慰謝料を請求することもできます。
裁判の場合は、裁判官が慰謝料を支払うべきか、支払うならその額を決めます。
5-2.離婚手続きとは分けて慰謝料を請求する方法
しかし、先に離婚が成立させてしまうと、相手から逃げられてしまい、慰謝料の請求をすることができなくなる恐れがあります。なので、できれば離婚を成立させるときに慰謝料についても決めた方が良いです。
離婚後に、慰謝料について当事者で話し合って合意する場合
慰謝料の額については、法律上の決まりはないので、金額・支払方法・支払期限などについて夫婦で自由に決めることができます。
その際に、決めたことは公正証書にしたほうがよいです。
離婚後に、裁判で慰謝料を請求する場合
裁判の場合は、夫婦双方の主張を聞いて、裁判所が慰謝料を支払うべきか、支払うならその額を判断することになります。
5-3.夫婦以外の者への慰謝料請求の方法
当事者で話し合って慰謝料を支払う合意する場合
慰謝料の額については、法律上の決まりはないので、金額・支払方法・支払期限などについて当事者で自由に決めることができます。
その際に、決めたことは公正証書にしたほうがよいです。
調停で慰謝料を請求する場合
調停委員をはさんで、相手方と話し合いをして、金額・支払方法・支払期限などについて当事者で決めます。
*離婚調停は家庭裁判所で行いますが、夫婦以外の者への慰謝料請求の調停を行うのは簡易裁判所です。
裁判で慰謝料を請求する場合
裁判の場合は、当事者双方の主張を聞いて、裁判所が慰謝料を支払うべきか、支払うならその額を判断することになります。
*夫婦以外の者への慰謝料請求と離婚原因が関連している場合(不倫を理由とする離婚の場合に不倫相手に慰謝料を請求するなど)、離婚訴訟とあわせて不倫相手などへの慰謝料請求の裁判をすることもできます。
6.離婚の慰謝料請求ができる期間
離婚の慰謝料請求は、原則として3年で時効となりますので、離婚が成立した日から3年を経過してしまうと、慰謝料を請求することができません。
ただし、生命・身体を侵害する行為(相手の暴力など)の慰謝料請求権の時効は5年です。5年を経過すると慰謝料を請求することができなくなります。
7.慰謝料と税金
離婚の慰謝料が現金で支払われた場合、原則として税金はかかりません。
ただし、慰謝料があまりにも高額な場合(一般的な離婚の慰謝料の金額を超える場合)、贈与があったのに、贈与税を逃れるために「慰謝料」という名前で支払われたと判断されて贈与税を支払わなければならない場合もあります。