1.民事法律扶助ってなに?
1-1.民事法律扶助の内容
民事法律扶助というのは、経済的に余裕のない方に対して、無料の法律相談や、必要な場合、弁護士・司法書士の費用等の立替えを行う制度です。
民事法律扶助は、全国にある「法テラス」(日本司法支援センター)という、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所が行っています。
2.民事法律扶助を利用できる人
2-1.民事法律扶助を利用するための4つの条件
① 日本国民あるいは在留外国人である
② 月収や財産が一定額以下である
③ 勝訴の見込みがないとはいえない
④ 民事法律扶助の趣旨に適している
2-2.日本国民あるいは在留外国人である
「在留外国人」の場合、日本に住所を有し適法に在留する外国人でなければいけません。
不法滞在の外国人や一時的に日本を訪れている外国人は利用できません。
2-3.月収や財産が一定額以下である
月収基準
申込者の手取り月収額(賞与を含む年収の12分の1)が以下の基準を超えないことが必要です。
単身者 | 2人家族 | 3人家族 | 4人家族 | |
---|---|---|---|---|
基本 | 18万2000円以下 | 25万1000円以下 | 27万2000円以下 | 29万9000円以下 |
大都市 | 20万0200円以下 | 27万6100円以下 | 29万9200円以下 | 32万8900円以下 |
家賃・住宅ローン 利用時の加算 |
+4万1000円 | +5万3000円 | +6万6000円 | +7万1000円 |
*大都市とは、東京・大阪などの場合を指します。
*5人家族以上は1人増えるごとに3万円(大都市の場合は3万3000円)がプラスされます。
*家賃や住宅ローンを支払っている場合は、限度額が加算されます。例えば、単身者の場合18万2000に4万1000円がプレスされます。
資産基準
申込者が持っている現金や預貯金等の合計が以下の額を超えないことが必要です。
単身者 | 2人家族 | 3人家族 | 4人家族 |
---|---|---|---|
180万円以下 | 250万円以下 | 270万円以下 | 300万円以下 |
③勝訴の見込みがないとはいえない
民事扶助制度が使用できるのは、話し合いや調停や裁判で解決できる見込みがあるケースに限られます。
2-4.民事法律扶助の趣旨に適している
民事法律扶助を使って相手に報復したい、違法なことをしたい、宣伝のために利用したいといったような目的では、民事法律扶助は利用できません。
3.民事法律扶助を利用するための手続
① 無料法律相談をして民事法律扶助の利用を申し込む
↓
② 法テラスによる審査
↓
③ 援助開始決定
↓
④ 事件終了
いきなり弁護士に離婚の手続き依頼するのではなく、まずは無料法律相談をするところからスタートします。
相談をしたうえで民事法律扶助の審査に進み、審査が通れば援助の開始となります。
4.申込方法
民事法律扶助を利用するには、以下のような方法があります。
①法テラスに連絡して申込する
②弁護士に直接、民事法律扶助を利用できるか問い合わせる
4-1.法テラスに連絡して民事法律扶助の申込する
最寄りの法テラスに問い合わせて、法律相談の予約や申込を行うこともできます。
この場合、法テラスがあなたの担当弁護士を決めます。法テラスと契約している弁護士の名簿順や、法律相談の日程順に弁護士が割り振られてしまうので、当たりはずれが大きいです。
法テラスの方で、弁護士の良し悪しを判断して、紹介することはできないので、「優秀な人を紹介してください」と頼んでも無理なのです。
4-2.弁護士に直接、民事法律扶助を利用できるか問い合わせる
全ての弁護士で民事法律扶助が利用できるわけではありません。全国で約23,000人の弁護士が法テラスと契約しており、民事法律扶助を利用させてもらえます。
いい弁護士が見つかっても、その弁護士が法テラスと契約しており、民事法律扶助を利用できるとは限りません。「民事法律扶助を利用できますか?」と問い合わせてみてください。
ただし、弁護士が法テラスと契約をしていたとしても、あなたが民事法律扶助を利用するための条件を満たしているかについて、法テラスによる審査を通ることが必要です。
5.民事法律扶助を利用した場合の弁護士費用
ただ、民事法律扶助を利用した場合は、弁護士費用が一律できまっていて、 それは一般の弁護士費用よりかなり安いです。
5-1.弁護士費用の種類
【着手金とは】
…弁護士に依頼をするときに最初に支払う費用。依頼人の望むような結果にならなかったとしても、着手金は返金してもらうことはできません。
【報酬金(成功報酬)】
…報酬金は弁護士に依頼した問題が解決したとき(相手が拒否していた離婚が成立する、相手と争っていた親権が自分のものとなる、慰謝料・財産分与・養育費がもらえるなど)に支払う費用です。
最終的に自分の希望が全く認められなかった場合は、弁護士に報酬金を支払う必要はありません。
5-2.民事法律扶助を利用した場合の弁護士費用
離婚協議を依頼する場合
【実費】
=20,000円
【着手金】
=63,000円~105,000円
【報酬金(成功報酬)】
●相手から金銭や財産等をもらわない場合やもらえる金銭が下記より低い場合
=63,000円~126,000円(標準額は84,000円)
●相手から金銭や財産等をもらう場合
給付を受けられた金額が3,000万円まで=10% 3000万円を超える部分=6%+120万円
離婚調停を依頼する場合
【実費】
=20,000円
【着手金】
=84,000円~126,000円
【報酬金(成功報酬)】
●相手から金銭や財産等をもらわない場合やもらえる金銭が下記より低い場合
=63,000円~126,000円(標準額は84,000円)
●相手から金銭や財産等をもらう場合
給付を受けられた金額が3,000万円まで=10% 3000万円を超える部分=6%+120万円
離婚訴訟を依頼する場合
【実費】
=35,000円
【着手金】
=189,000円~241,500円(標準額は220,500円)
*調停から引き続いて訴訟を行う場合には、追加の着手金=157,500円
【報酬金(成功報酬)】
●相手から金銭や財産等をもらわない場合やもらえる金銭が下記より低い場合
=63,000円~126,000円(標準額は84,000円)
●相手から金銭や財産等をもらう場合
給付を受けられた金額が3,000万円まで=10% 3000万円を超える部分=6%+120万円
6.弁護士費用の支払い方法
民事法律扶助の審査に通って利用ができる場合、法テラスが弁護士費用を立て替えます。
なお、裁判所への予納金など、一部立て替え払いの対象外になる費用があるため注意してください。
立て替えた弁護士費用については、原則として月1万円ずつ返済することになります。
ただし、収入状況によっては返済額を減額してもらったり減額や返済を待ってもらえたりすることもあります。
そして、離婚手続きの中で相手方から慰謝料や財産分与などの金銭などを受け取った場合は、弁護士や法テラスがその金銭をいったん預かって、金銭から弁護士費用が清算されます。
7.生活保護を受けている場合の民事法律扶助
7-1.弁護士の援助を受けている間
原則として、弁護士による援助が終わるまで、弁護士費用の返済をしなくて大丈夫です。
7-2.弁護士の援助が終わった後
相手方から慰謝料や財産分与などの金銭などを受け取った場合は、弁護士や法テラスがその金銭をいったん預かって、金銭から弁護士費用が清算されます。
相手から金銭を受け取れなかった場合は、弁護士費用が免除されます。相手方から金銭を受け取れたが弁護士費用よりも低額な場合は、受け取った金銭から弁護士費用を支払っても足りない分は、その弁護士費用は免除されます。