1.調停離婚とは?
1-1.調停離婚とは、調停委員をはさんで話し合う離婚のこと
調停離婚とは、家庭裁判所で調停委員に1人ずつ自分の意見を伝え、離婚をすることや離婚の条件を話し合って決める離婚のことを指します。
*離婚調停は、正式には「夫婦関係調整調停」といいます。
1-2.調停では何をするの?

調停室には、男女1名ずつの調停委員2名がいます。(裁判官が同席することもあります。)
夫婦それぞれ1人ずつ、調停室に入って、調停委員に自分の意見を伝えます。相手の意見については、調停委員から聞きます。
調停委員は、夫と妻のそれぞれの意見を相手に伝えるだけでなく、必要な場合はアドバイスを与えたり、解決案を提案してくれたりすることもあります。
そして、お互いに離婚をすることや、慰謝料、親権、養育費、財産分与などの離婚の条件に同意をした場合には、調停離婚が成立します。
1-3.離婚調停で話し合う内容
〇離婚するのか、しないのか
〇子どもについて
・親権者(未成年の子がいる場合)
・面会交流
・養育費
〇金銭の請求について
・慰謝料
・財産分与
・年金分割
など…
1-4.調停の期間
ほとんどの離婚調停は半年くらいで終了します。
あっさり夫婦が合意すれば1ヶ月くらいで終わりますが、合意がなかなかまとまらなければ1年以上かかることもあります。
調停と次の調停の期日は、だいたい1ヶ月~1ヶ月半に1度というペースで行われます。調停での話し合いがまとまらなければ、調停の回数も増えます。
1-5.離婚調停にかかる費用
調停自体の費用は5000円程度です。
この他に、弁護士に依頼する場合は弁護士費用もかかります。
2.協議離婚よりも調停離婚を選んだ方が良い場合
しかし、調停離婚のメリットもあるので、どちらが良いかを考えてみてください。
□相手を話し合いに来そうもない場合
協議離婚の場合は、相手が話し合いに来なければ離婚することができません。
しかし、調停離婚の場合は、家庭裁判所から呼び出しの通知が来るので、ほとんどの人は調停に来ます。無断欠席をすれば、5万円以下の罰金を科せられることもあります。
つまり、相手が離婚の話し合いに応じようとしない時には、離婚調停を申し立てれば話し合いの場につかせることができるのです。
□暴力・モラハラ・ストーカーなど、顔を合わせたくない場合
調停での話し合いは、夫婦でお互いに顔を合わせないで行うことができます。
そのため、暴力・モラハラ・ストーカーなど、顔を合わせたくないでも、話し合いができます。
□冷静な話し合いができそうもない場合
調停委員は、時にアドバイスをくれることもありますし、他人に話を聞いてもらうことで、お互いに冷静になれることが多いです。
相手が無理な主張をしている場合は、調停委員が相手を説得してくれる場合もあります。
なので、調停委員が正しい判断をして相手を説得してくれるかは、残念ながら運しだいです。
□離婚協議書・公正証書の作成が自分でできそうもない場合
離婚の時に決めた、養育費・慰謝料・財産分与などの支払いを相手がしない場合は、強制執行(相手の財産を差し押さえて、そこから支払いを受けること)をする必要があります。
協議離婚の場合に、強制執行をスムーズにするためには、あらかじめ養育費・慰謝料・財産分与などの離婚の条件を離婚協議書という文書にして、それを公正証書(強制執行認諾文言付き公正証書)にしておく必要があります。
□離婚が最終的に裁判になりそうな場合
自分は離婚したいのに相手が離婚に応じない場合や、離婚の条件(親権・養育費・慰謝料・財産分与など)でもめそうな場合は、最終的には裁判するしかありません。
離婚裁判をする前には、必ず、離婚調停をしなければならないと法律で決められています。
ですので、もめて裁判になりそうな場合は、はじめから協議離婚ではなく調停をした方がよいでしょう。
3.離婚調停に弁護士は必要?
3-1.弁護士に頼まなくても離婚調停はできます
弁護士に依頼しなくても、離婚調停は自分で申し込みをすることができます。
家庭裁判所へ行って、受付などで離婚調停をしたいことを伝えれば、やりかたを教えてもらうことができます。
離婚調停に必要な書類の書き方などは、家庭裁判所のサイトにも記載されています。
相手方から離婚調停を申し立てられた場合も、自分は弁護士に依頼しなければ調停が進められないというわけではありません。
3-2.弁護士に依頼するメリット
調停委員が弁護士の場合もありますし、弁護士でなくても経験豊富な調停員が適切なアドバイスをくれることもあります。
しかし、調停委員は法律の知識がない人もなれますし、相手の味方になってしまい適切なアドバイスをしてくれないことも多いです。
なので、弁護士に依頼して、アドバイスをもらえば、有利に交渉すすめることができます。
また、弁護士は、調停室に一緒に入ることができるので、調停中もサポートしてくれます。
弁護士に依頼しない場合よりも早く調停が成立することも多いです。
4.どうしたら離婚調停を有利にすすめられるの?
4-1.調停委員を味方につけること
男女1名ずつの調停委員は、いわゆる地元の名士のような人や、弁護士などから裁判所から任命されます。
年齢は60歳代が約70%,50歳代が約20%です。
法律の知識がある調停委員や、経験豊富で中立的な立場で、適切なアドバイスをしてくれるすばらしい調停委員もいます。
しかし、年齢が上の人が多く、「妻はこうあるべきだ」「夫はこうあるべきだ」という偏見で、自分の意見を押し付けてくるようなひどい調停委員もいます。
ひどい調停委員に当たった場合も、なるべく調停委員を自分の味方につけるように努力してください。
調停の時間はきちんと守ること、感情的にならずに冷静に自分の主張を伝えること、服装はきちんとした格好をすること、調停委員に対してていねいな対応をすることなどをこころがけましょう。
うまく、調停委員を味方につければ、相手に対してあなたの意見に従うように説得してくれることもあります。
3-2.あなたが離婚したい場合にすべきこと
□離婚しようと思った原因・経緯をわかりやすくメモしておくこと
価値観の不一致、DV、不倫など、離婚の原因をメモします。
それぞれの原因について、何月何日に何があったのかを整理してメモしておいてください。
□何を請求するかをわかりやすくメモしておくこと
財産分与、慰謝料額、親権、養育費、面会交流、年金分割など、何をいくら請求したいかメモしておいてください。
□証拠を集めておくこと
離婚原因について、証拠があれば、有利に離婚を進めることができます。
できるだけ事実を具体的に伝えることで、有利に進めやすくなります。
□夫婦の財産を調べて、その証拠となるものを用意すること
財産分与では原則として夫婦の財産を半分にわけることになりますので、通帳など財産がわかるものを準備しておくと良いです。
このとき、相手が貯金などを隠す可能性もあるので、調停前に財産を調べておく必要があります。
ただ、不倫や暴力などの証拠をきちんと準備しておけば、相手も認めやすいですし、調停委員も相手を説得してくれやすいので、あなたに有利に離婚をすすめることができます。
3-3.あなたが離婚をしたくない場合にすべきこと
□自分の意見をメモしておく
相手から離婚を請求されたけれど、自分は離婚したくない場合も、自分の意見をまとめて文書にしておきましょう。
相手方が非難している点をどう改善するか、どのように夫婦関係を修復していくかという具体的な解決策を考えましょう。
□相手を非難しないこと
相手方から離婚をしたいと非難されても、非難し返すと調停委員に「夫婦関係の修復は無理だ」という印象を与えてしまいます。
できるだけ冷静に相手の言い分を聞いて、離婚したくないという意思を伝えてください。
4.離婚調停の流れ
4-1.調停離婚が成立する場合の流れ
①夫婦の一方が家庭裁判所に調停の申し込みをする
↓
②家庭裁判所から夫婦それぞれに、いつ家庭裁判所にくるようにという呼び出し状が届く
↓
③夫婦それぞれが家庭裁判所に行き調停が何回か繰り返される
↓
④離婚することや離婚の条件について、夫婦で合意すれば調停離婚が成立
↓
⑤合意した内容を裁判官が確認し、調停調書を作成する
↓
⑥調停離婚成立から10日以内に、夫婦の一方が離婚届を提出
たとえば、「100万円を払う」などと口約束だけをしたような場合は、支払われないときは、相手の財産を差し押さえるには、裁判を起こす必要があります。
しかし、調停が成立すれば、支払がされない場合、裁判を起こさなくても相手の財産を差し押さえることができるのです。
4-2.調停離婚が成立しない場合の流れ
①夫婦の一方が家庭裁判所に調停の申し込みをする
↓
②家庭裁判所から夫婦それぞれに、いつ家庭裁判所にくるようにという呼び出し状が届く
↓
③夫婦それぞれが家庭裁判所に行き調停が何回か繰り返される
↓
④離婚することや離婚の条件について、合意が成立しない
↓
⑤離婚しない、あるいは離婚裁判を行う
4-3.離婚調停はどこの家庭裁判所で申し込みをするの?
調停を行うには、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」という調停の申し込みをします。
申し込みを行う場所は、相手の住所がある場所の家庭裁判所です。すでに別居していて、相手方が遠方に住んでいる場合でも、相手の住所がある場所の家庭裁判所に申し立てるのが原則です。
ただし、夫婦で合意すれば、相手の住所以外の場所の家庭裁判所に調停の申し立てをすることもできます。
4-4.調停の申し立てに必要な書類
□申立人の印鑑・戸籍謄本(発行後3カ月以内のもの)
□夫婦関係調整調停申立書(3つ作ります)
相手に請求する離婚の条件(親権者、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割についてあなたが請求する内容)や、離婚の原因などを記載します。
→夫婦関係調整調停申立書のダウンロードはこちら
→夫婦関係調整調停申立書の記入例はこちら(家庭裁判所でもらうこともできます)
調停委員がこちらの希望額と相手の希望額を聞いて調整するから、あなたが書いた希望額より低くなることが多いからです。
□年金分割を求める場合は年金分割のための情報通知書(発行後1年以内のもの)
→年金分割のための情報通知書と記入例のダウンロードについてはこちら
□事情説明書(+陳述書)
夫婦それぞれの収入、財産、夫婦が不仲になった事情など、離婚を希望する事情を簡単に書きします。
事情説明書に書ききれなかったことは「陳述書」という題名を書いて、別の紙に書いて提出することもできます。
→事情説明書のダウンロードはこちら(家庭裁判所でもらうこともできます)
相手の悪口などを書くと、相手が怒って調停がうまくいかなくなってしまうので、何をされたかという事実を書いてってください。
□子どもについての事情説明書(未成年の子どもがいる場合のみ)
未成年の子どもがいる場合、誰が世話をしている)、子どもに関する要望などを記載します。
→子どもについての事情説明書のダウンロードはこちら(家庭裁判所でもらうこともできます)
□進行に関する照会回答書
調停の希望曜日などを記載します。
→進行に関する照会回答書のダウンロードはこちら(家庭裁判所でもらうこともできます)
□連絡先の届出書
家庭裁判所からの調停に関する書類を送る場合にどこに送ってほしいか、家庭裁判所から電話連絡をする場合の電話番号などを記載します。
→連絡先の届出書の説明はこちら
→連絡先の届出書のダウンロードはこちら(家庭裁判所でもらうこともできます)
→連絡先の届出書の記入例はこちら
□非開示の希望に関する申出書
家庭裁判所に提出する書類に、相手に知られたくない情報(自分の住所・電話番号)などがある場合には、その書類1枚ずつに「非開示の希望に関する申出書」をホチキスで付けて提出します。
たとえば、「連絡先の届出書」に書いてあること(自分の住所・電話番号)を相手に知られたくない場合は、「連絡先の届出書」に「非開示の希望に関する申出書」をホチキスで付けて提出します。
→非開示の希望に関する申出書の説明はこちら
→非開示の希望に関する申出書のダウンロードはこちら(家庭裁判所でもらうこともできます)
→非開示の希望に関する申出書の記入例はこちら
4-5.書類の提出の仕方
これらの書類を相手の住所がある場所の家庭裁判所に提出します。
4-6.調停の日の準備
裁判所からの呼び出し
家庭裁判所に調停の申し立てをすると、夫婦の両方に、家庭裁判所から第1回の調停の日の連絡があります。
指定された日に行けない場合は、家庭裁判所に連絡をして調停日の変更をお願いしてください。
調停の持ち物
□裁判所からの呼び出し状
□裁判所に提出した書類のコピー(申立書など)
□身分証明書(免許証など)
□印鑑(シャチハタなどのゴム印は不可)
□筆記用具・調停の内容をメモするためのノート
□相手に求める内容などを書いたメモ
・離婚しようと思った原因・経緯
・財産分与、慰謝料額、親権、養育費、面会交流、年金分割など、何をいくら請求するか
・不倫や暴力などの証拠
・夫婦の財産の一覧と、その証拠となるもの(通帳や不動産の登記簿のコーピーなど)
□財産分与や慰謝料を請求する場合は振込先の口座番号のメモやコピー
支払いを振り込みで受ける場合は、振込先の口座番号が必要です。通帳を持参してもよいです。
□年金分割請求をするときは「年金分割のための情報通知書」(年金事務所に請求する)
□飲み物、時間をつぶす道具
相手が調停委員と話している間は待合室で待たなければならない。長時間待つこともある。
5.調停当日の1日の流れ
①調停期日に、指定の家庭裁判所へ行く
↓
②調停が始まるまで控室で時間まで待機
↓
③調停委員から調停室への呼び出し
調停を申し立てた側から1人ずつ、調停室に呼び出されて、調停委員との話し合いを行います。第1回の調停期日では、調停についての説明をはじめに行います。その後、申し立てた経緯や理由についての質問があります。
30分程、話し終えたら、待合室に戻ります。
↓
④調停室での話し合いの繰り返し
その後、相手方が呼び出され、相手方が調停室で話し合いを行います。これを2回ほど、繰り返します。1日の調停は2時間程度です。話し合うべきことが多い場合には、もっと時間がかかることもあります。
↓
⑤その日の調停の終わり
最後に、次の期日が決められます。この時、調停委員から、次の期日に資料などを準備して提出するよう言われる場合もあります。
↓
⑥第2回目以降の調停期日
1回目と同じ流れで進みます。
6.調停で話し合いがまとまったら何をするの?
①調停内容を口頭で確認
調停室に裁判官、調停委員、書記官、夫婦が立ち会います。そして、裁判官が調停で決まった内容が読み上げ、間違いがないかを確認します。
②調停の調書作成
確認ができたら裁判所が調停調書を作成します。
③調停調書の送達(郵送)
調停調書が夫婦の両方に送達(郵送)されます。
④離婚届の作成・提出
調停離婚の場合も役所に離婚届を提出する必要があります。
離婚届の提出は、調停が成立してから10日以内にする必要があります。
原則として、調停を申し立てた人が離婚届を提出します。例えば、夫が調停を申し立てた場合は、夫が離婚届を提出します。
ただし、結婚の際に妻が夫の姓になっていた場合は、夫が調停を申し立てて調停が成立したとしても、「相手方からの申し出により調停離婚する」と調停調書に書いてもらい、妻が離婚届を提出するようにします。この場合は、離婚届を提出する際に、妻は新しい戸籍を作るか、元の戸籍に戻るかなど、役所で決めなければならないことがあるので、妻が離婚届を提出したほうが良いからです。
⑤年金分割がある場合は、年金事務所での手続きが必要
7.調停後に支払いがされない場合は?
上記のように、離婚調停が成立すると、調停調書が作成されます。
この調停調書があれば、養育費・慰謝料・財産分与を支払わないなど、離婚調停で決められた内容を守らなかった場合には、相手の給料・預金・不動産・家財道具などの財産を差し押さえてそこから支払いを受ける「強制執行」を行うことができます。
たとえば、「100万円の慰謝料を払う」などと口約束だけをしたような場合は、相手の財産を差し押さえるには、裁判を起こす必要があります。
しかし、調停が成立し、調停調書が作成された場合は、この調停調書があれば、裁判を起こさなくても相手の財産を差し押さえることができるのです。
8.離婚調停で話し合いがまとまらなかった場合
話し合いがまとまらないため、調停は成立しないこともあります。これは「調停不成立」と呼ばれ、離婚ができないまま終了します。
それでも、離婚をしたい場合は離婚裁判を行うことになります。
調停成立・不成立以外でも、申し立ての取り下げで終了するケースもあります。